素晴らしいシンガーで人間の(皆そうですが。。。笑)西村知恵さんが、田村陽介コードレスカルテットとの6年間ほどを振り返るエッセイを送ってくださいました。
知恵さんとのこの6年ほどは、本当に刺激の多い、考えさせられる、充実した年月でした。(そして、僕にとってはとても楽しい日々でした。ありがとうございました!)
とりあえず一段落?なこのタイミングですが、お客様からのラブコールもちらほら頂いている今日この頃、また、色々な形で共演させていただけることもあるかと思っています。その日に備えて、楽しみに少しずつ力を蓄えていきます。
それでは知恵さんの文章です!
「コードレスカルテットとのこと」by 西村知恵
2016年1月、ライブのお客さんが田村陽介コードレスカルテットを紹介してくださったのがキッカケでの出逢いで、最初の印象を今でもよく覚えています。 “アレンジがとても繊細、そしてその美しいハーモニー、なんて気持ちいいんだろう…!和音楽器がいない事を全く感じさせない安定感がさらに大人な隙間を感じさせる。かっこいいなぁ” ひたすらそう感じた私には、コードレスバンドの難しさなんてまだ全く分かっていませんでした。
その後、田村さんのコードレスカルテットライブにゲスト参加させて頂くことになっていき、知的で大人な魅力のバンドをイメージしていた私に待っていたのは『まずバランスを聴くこと考えること』。声量からピッチ、ソロの分量やパターンの可能性の数まで簡単に書き表せないことがまだ沢山あって。トランペット&バルブトロンボーン奏者の宮本裕史さんが人間の能力を超えた(と私は思っています)ところで、一瞬で、同時に、いろんな事に気付き質問を投げかけられメンバーで話し合う、を繰り返していく。それは私には全くついて行けないスピードでした。 “うわぁ…こんなに細かく丁寧に聴き取りながら分析して行くんだ。しかも、アレンジに対してのアンサンブルがなかなかカッコイイ流れになったと思ったのに、納得いかない部分があったら曲ごとやめちゃうんだ?ひゃあぁ、なんて大変な作業!!” 私の頭の中は、だいたいこんな感じに驚いてることが多かったですね。リハーサルや本番の回数が増えても能力が簡単には上がらず、ひたすら気を確かに持つコトだけ頑張っていた記憶があります。
それから、田村陽介コードレスカルテットに私、更に5人の管楽器奏者(トランペット、ソプラノサックス、テナーサックス、トロンボーン等等)が加わり、宮本さんにアレンジャーとバンマスまで頼らせて貰った…西村知恵 Special 10tet (2017年〜2020年)というコードレスのままで10人編成のバンドにまで至りました。私がやりたいと言い出しておいて何ですが、それはまるで修行のような「刺激と崖っ淵」の体験ばかりで本当に凄かった。ジャズミュージシャン達が最高なチームワークを発揮するために、瞬間瞬間に音で助け合ったり時には励ましたり、いい音を奏でながらいくつもの場面に細やかに気を配りシュートを決め、ゴールまで諦めずに立ち向かうスポーツのようであり、それでいて芸術作品なんですよね。
その集大成となった今回のアルバム『Love Calls』は、カルテットの初期メンバーとのご縁や想いから大切にされている田村さんの穏やかな愛を感じ、そこから刻まれるリズムはニューオリンズの香り、宮本さんのロマンチックなアレンジから演奏は甘酸っぱいフレーズで心躍らせるスィング、江澤茜さんのアルトとテナーサックスのなんと鋭くも厚みのある渋いサウンドとベテラン並のテクニックで、そして粟谷巧さんのバンドを包み込むベースサウンドに時折見せる熱い視線のようなソロ。その全てがもの凄く心地よくて…。 改めまして、アルバムリリースおめでとうございます。田村陽介コードレスカルテット作品の中で歌わせて頂けたこと、とても光栄です。ありがとうございました!! CDアルバム発売記念ライブは最終日を迎えましたが、これから始まる田村陽介コードレスカルテット・ストーリーは、いくつもの表情で聴く者たちを益々ロマン溢れる世界へ連れて行ってくれることを、誰もが期待して止まないのではないでしょうか。
アルバムを聴いて下さる皆さん、またどこかでお会いした時には感想を是非聞かせて欲しいなぁ〜!!!西村知恵でした。
2022年7月4日